差押え(さしおさえ)
差押えとは、借金や税金などの支払いが滞った際に、債権者や国・地方自治体といった公的機関が、債務者の財産を強制的に押さえ、処分を制限する手続きのことをいいます。差押えが行われると、その財産は勝手に売却や譲渡ができなくなり、債権者はその財産を通じて債権回収を図ることができます。
例えば、住宅ローンを長期間滞納すると、金融機関は裁判所を通じて差押えを申し立てます。不動産が差押えられると、登記簿謄本に「差押え」の記録が記載され、住宅の売却や新たな担保設定ができなくなります。最終的には競売にかけられ、強制的に売却されてしまうことが一般的です。この場合、売却価格は市場価格よりも低くなることが多く、結果として債務が多く残ってしまうリスクもあります。
差押えの対象となる財産は、不動産だけではありません。給与、預貯金、車両、株式なども対象となることがあり、特に給与の差押えは生活に直結するため、早急な対応が求められます。給与差押えでは、法律により一定の生活費を残す配慮はされていますが、支出に大きな影響を与えることは避けられません。
通常、差押えが行われる前には「督促状」や「催告書」、「差押予告通知」といった文書が届きます。これらを無視すると、手続きは着実に進み、財産を失うリスクが高まります。しかし、差押えの段階であっても、すぐに諦める必要はありません。債権者との交渉によって、支払方法の見直しや和解が成立すれば、差押えの解除が可能な場合もあります。
また、差押えが進行している状態でも、任意売却を選択できるケースもあります。任意売却とは、債権者の同意を得て不動産を市場価格で売却し、競売を回避する方法です。競売よりも高い金額で売却できる可能性が高く、残債務を減らせるメリットがあります。さらに、任意売却後の生活再建も比較的スムーズに進めやすい点も大きな利点です。
差押えは、財産を守る最後のチャンスを奪いかねない深刻な事態です。滞納や返済困難に陥った場合は、できるだけ早く専門家に相談し、適切な対策を講じることが何よりも重要です。